「出版ビジネスはもう限界 書店の役割を再定義せよ」 インタビュー/有隣堂 社長 松信健太郎

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まつのぶ・けんたろう1972年生まれ。95年に早稲田大学教育学部を卒業。約10年間司法試験に挑戦し、2007年に有隣堂入社。執行役員、副社長を経て20年9月から現職。(撮影:大澤 誠)

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ピーク時に2万店を上回った書店数は1万店を割り込み、2019年度は9242店となった。

苦境続きの書店ビジネスだが、有隣堂は神奈川、千葉、東京エリアに約40店の書店だけでなく、飲食店やアパレル、理容店などと書籍販売を組み合わせた複合店舗を展開している。創業家出身で20年9月に第7代社長に就任した松信健太郎氏に、出版業界が抱える構造問題について聞いた。

──20年の紙の出版市場は前年比0.9%の減少にとどまりました。

『鬼滅の刃』という化け物作品の登場と、コロナ禍で自宅に押し込められた人々が身近な娯楽を求めて書店に押し寄せたという、2つの偶発的な要素が重なっただけだ。マーケットが成長しているという実感は持てない。

──有隣堂グループは20年8月期に最終赤字に転落しました。

一昔前までは書店が利益の中心を担っていたが、今は利益の大半を書店以外が稼いでいる。営業利益率1%を目標に、懸命に(経営の)立て直しを図っている。競合する書店グループの多くも同じ状況で、2%以上の利益率(を達成するの)は難しくなっている。

──コスト削減はやりきったと?

自動支払機など、効率化の余地はあるが、ほぼやりきった。書店ビジネスのコストは人件費と施設費、家賃で、これらをこれ以上減らすのは非常に難しい。今まで10人で回していた書店運営を5人でやってくださいなどとお願いしてきたが、正直言って現場は苦しい。

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