約10年で3000店が消滅、「町の本屋」の切実事情 商材の拡大や収益源多角化へ、迫られる変革

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出版市場の縮小が止まらない。直撃を受けているのは町の書店だ。苦境にあえぐ町の書店の奮闘ぶりを追った。

横浜市の石堂書店が展開する「本屋・生活綴方」(記者撮影)

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「『鬼滅の刃』があっても一時的で、大きな流れは変わっていない」

そう言って嘆くのは、東急東横線沿いを中心に横浜市内で書店と文具店を計6店運営する地場チェーン「天一書房」の統括店長、南雲光晴氏だ。

店舗は商店街や駅ビルなどに立地している。同社は市場が成長しているコミックスに注力するなど、エリアでの厳しい競争を生き抜いてきたが、足もとの売上高は最盛期の1990年代後半と比べて40%以上落ち込んだという。

南雲氏は「書店事業はなんとか黒字を維持できている状況。市場規模はじわじわと落ちており、業況は厳しい」と語る。

出版物以外の商材を拡大

中でも厳しいのが週刊誌だ。情報をネットで即時に取得できるようになった影響が直撃し、市場全体の部数はピーク時と比べて8割強減少し、14%まで縮小した。雑誌市場の縮小はとまらず、例えば、2021年に入って創刊から50年になる「週刊パーゴルフ」が休刊した。

天一書房日吉店の文具売り場。フロアの20%を割いた(記者撮影)

主要なジャンルの1つである文庫も売れなくなっている。「本を読む暇があったらスマホを眺めるようになった時代の変化に加えて、読書に充てられてきた通勤通学の時間が、コロナ禍で縮小した影響が大きい」(南雲氏)。

売り上げ減少が止まらない中、打ち出したのが経費削減や在庫構成の見直しといった売り伸ばし策を行い、書籍や雑誌以外の商材を拡大した。

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