スイスの製薬大手・ノバルティス日本法人の社長を4年弱務めた後、自ら起業に踏み切った綱場氏。そのきっかけは?(撮影:尾形文繁)
巨大ファンドが狙いを定めたのはどんな企業なのか――。ソフトバンクグループ傘下で14兆円もの巨額資金を運用する「ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)」が、日本のベンチャー企業に初めて投資した。
投資先はバイオベンチャーのアキュリスファーマ(神奈川県藤沢市)。2021年1月に設立されたばかりだが、事業の初期段階である「シリーズA」の資金調達で、6社の投資家からいきなり総額68億円を集めた。今回の投資はSVFの2号ファンドが主導し、SVFの投資ディレクターがアキュリスファーマの社外取締役に就いている。
アキュリスは、スイスの製薬大手・ノバルティス日本法人の前社長である綱場一成氏が創業。フランスの製薬会社から、欧米での製造販売が承認されている睡眠障害の治療薬「ピトリサント」の日本での開発販売権を取得した。
今回、東洋経済は綱場社長を直撃。会社設立の背景やアキュリスのビジネスモデル、SVFからの出資の経緯について聞いた。

外資大手に感じた「限界」

──起業の背景は?

昨年10月末に、2017年から務めていたノバルティスファーマの社長を退任して起業した。投資家の皆さんからも「4年弱社長を務めてきて、なぜ今起業するのか」とよく聞かれた。

医薬品の研究開発や販売にはやりがいがあったが、同時に、日本の社会課題に真っ向から取り組みたいという思いもあった。外資企業の日本法人社長だと、海外で決めるグローバル戦略が降りてきて、それに原則従わなければならない。日本の社会課題にがっぷり四つで組みに行くのは難しい。

そんな中、ベンチャーキャピタルのキャタリスパシフィックと出合った。私は医薬品ビジネスの専門家ではあるが、資金調達の面では素人。アキュリスを立ち上げるにあたり、私は組織作りと実際にビジネスをどう動かすかの部分を担い、キャタリスがお金の部分を全面的に担う形で共同創業に至った。

──海外ですでに販売されている睡眠障害薬「ピトリサント」の開発販売権をフランスの医薬品メーカーから取得しました。