10月上旬以降、武田薬品の株価は値を下げた(編集部撮影)

医薬品メーカー国内最大手の武田薬品工業は10月28日に中間決算の発表と併せて、1000億円を上限とする自己株買い(発行済み株式数に対して約2%)を発表した。自己株買いは実に13年ぶりだ。

「今の株価は過小評価されている。強力なキャッシュフローを生かして取得するいい機会だ」。当日の決算説明会で、コスタ・サルウコスCFOは理由をそう説明した。

実際、武田の株価は冴えない。期待の新薬候補の臨床試験を中断すると発表した10月上旬以降、3700円前後で推移していた株価は一時3200円を割り込んでいたからだ(詳しくは、武田薬品、投資家の「失望」を招いた新薬開発の中断)。

見逃せないPBR1倍割れ

「株価急落を受けて、市場に対して『きちんと株価はケアしていますよ』というメッセージだろう」。クレディ・スイス証券の酒井文義アナリストは今回の自己株買いをこう見る。タイミングについては、「今後、主力製品に相次いでジェネリック薬が参入してくる影響でキャッシュフローはさらに傷む。今はこの規模の自己株取得ができるぎりぎりのタイミング」(酒井氏)と解説する。

早ければ、2023年にADHD薬の「バイバンス/ビバンセ」(2021年度の全社売上高は3090億円の見込み)、2024年には欧州で「エンティビオ」(同5380億円)のジェネリック薬が参入してくる。特にエンティビオは武田にとっての最大製品であり、売上高の急減は免れない。

業績動向のほかに見逃せないのは、今回の自己株買いは、株価の急落によってPBR(株価純資産倍率)が1倍を下回ったタイミングで発表されているということだ。

実は今の武田には、PBRの低下をこのまま放置しておけない理由がある。