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対華21カ条要求は世論におもねった外交 遅れてきた帝国主義国家

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第1次世界大戦での強圧的な中国への要求は、当時の世論の反映であった。

大隈外交は中国の憤激を招き、欧米諸国も警戒した。大隈重信首相(右、国会図書館デジタルコンテンツ)と袁世凱・大総統(アフロ)

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1915年1月、日本は中国にいわゆる21カ条の要求(対華21カ条要求)を提出した。前年7月に第1次世界大戦が勃発すると、日本は同盟国である英国側に立って直ちに参戦し、敵国ドイツが領有していた山東半島の青島周辺を占領した。21カ条要求は、日本がこの旧ドイツ領を当面統治し続けることを中国に認めさせるとともに、日中間に存在する諸懸案を一挙に解決することが目的であった。

当時日中間の最大の懸案が、満州権益の延長問題だった。日本は、日露戦争に勝利し、ロシアから遼東半島の租借権、南満州鉄道の使用権を手に入れた。しかし、それらは最も早いもので23年には中国に返還しなければならなかったため、租借・使用期限の延長は日本外交にとって焦眉の課題となっていた。

第1次大戦の勃発は、欧州列強が中国情勢に関与する余裕を失うことを意味し、大隈重信首相、加藤高明外相をはじめ、日本の政治指導者の多くが、満州問題を解決するチャンスが到来したと受け止めた。元老・井上馨(かおる)の「天祐」という有名な言葉が当時の雰囲気をよく示している。こうして日本は、旧ドイツ領山東半島の継承のみならず、満州権益の租借・使用期限の延長を中国に要求するに至った。

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