論争を巻き起こした「最低賃金上昇」と雇用の関係 ノーベル経済学賞のD.カード氏の研究に迫る①

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2021年のノーベル経済学賞はどのような研究を評価したのか。受賞者の1人、デビッド・カード教授の孫弟子に当たり、労働経済学を専門とする東京大学の近藤絢子教授に解説してもらった。

2021年のノーベル経済学賞は3人の経済学者が受賞した(写真:AFP=時事)
今年のノーベル経済学賞受賞者は、カリフォルニア大学バークレー校のデビッド・カード教授、マサチューセッツ工科大学のヨシュア・アングリスト教授、スタンフォード大学のグイド・インベンス教授に決定した。
労働経済学の分野へのカード氏の貢献とはどのようなものなのか。労働経済学を専門とし、カード氏の孫弟子に当たる東京大学の近藤絢子教授に聞いた。

 

──今回、ノーベル経済学賞を受賞したデビッド・カード氏はどのような研究をしている人なのでしょうか。

労働や教育に関するあらゆるテーマの研究をしてきた労働経済学者です。カード氏がすごいのは、さまざまな分野の研究に取り組み、しかもそれぞれの分野で一流学術誌に載っている非常に有名な論文があること。

今回の授賞理由は「労働経済学への実証的な貢献」で、彼の業績の中から最低賃金、移民、教育に関する研究がとくに大きく取り上げられました。これらの研究では、「自然実験」と呼ばれる状況を利用した実証分析が行われています。

メディアで報じられた最低賃金に関する研究は、簡単にいうと「最低賃金を上げても雇用は減らない」というもの。論争を巻き起こし、労働経済学の世界では、いろいろな意味で非常に有名な論文です。

――「自然実験」という言葉になじみがないのですが。

まずは「最低賃金と雇用」に関する研究を知れば、「自然実験」についても理解できると思います。

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