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『福祉国家 救貧法の時代からポスト工業社会へ』 『ジョブ型雇用社会とは何か 正社員体制の矛盾と転機』ほか

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福祉は成長のかせにあらず リスク分担の機能不全に問題
評者/BNPパリバ証券経済調査本部長 河野龍太郎

『福祉国家 救貧法の時代からポスト工業社会へ』デイヴィッド・ガーランド 著/小田 透 訳(書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします)
[Profile] David Garland 1955年生まれ。英エディンバラ大学法学部卒業後、84年同大学で博士号を取得。現在、米ニューヨーク大学教授。法社会学分野の第一人者で、雑誌『処罰と社会』の創刊編集者。著書に『処罰と福祉』『統制の文化』など。

日本の少子化は、1970年代の婚姻率や出生率の急低下だけが原因ではない。90年代以降、長期停滞が続く中、家族の形や働き方が大きく変わり、われわれが直面する社会的リスクは多様化した。旧来のままの社会保障では包摂できず、望んでも結婚も子供を持つこともできない人が増えたのだ。先進各国は社会構造の変容にどう対応したのか。世界的に著名な社会学者が、歴史的かつグローバルな視点から福祉国家をコンパクトにまとめた。

近代以前から共同体には、困窮者支援の機能が組み込まれ、それが統治に不可欠であることを権力者は認識していた。都市化、工業化、市場化が始まる近代に移行すると、自由放任の教義に対抗し、労働者を保護する仕組みが徐々に形成された。

国家単位の社会保障が整い始めるのは、19世紀末と20世紀初頭の世界的大不況の後だ。2度の総力戦を経て、無保障、雇用不安、貧困化の解消を目的に福祉国家が誕生する。大量生産時代に適応し、男性を一家の大黒柱と想定した中間層を支援するための枠組みが各国で完成する。

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