カフナー氏は「私に期待されているのは、トヨタに異なる視点をもたらすこと」と述べた(撮影:尾形文繁)

自動車業界は今、大変革のただ中にある。欧米メーカーはこぞってEVシフトを宣言。米グーグルや米アップル、台湾の鴻海(ホンハイ)など、異業種の参入で産業構造が変わり始めている。

トップメーカーのトヨタ自動車は変化の波に乗り、王者であり続けられるのか。次世代技術開発のカギを握り、次期社長の呼び声が高いジェームス・カフナー氏に聞いた。

──世界でEVシフトが進む一方、トヨタはハイブリッド車(HV)や燃料電池車(FCV)を含めた全方位の電動化を掲げています。

忘れてはいけないのは、電動化の目標はカーボンニュートラル(以下、脱炭素)であり、EV自体が目的ではないということだ。EVが脱炭素を加速させ達成する道の1つであることは確かで、私はエキサイティングな方法だと思っている。ただ、世界中のモビリティの未来を考える方法はほかにいくつもある。

1つ例を挙げよう。EV1台分のリチウムイオン電池があれば、プラグインハイブリッド車(PHV)を3台製造できる。PHVは(EVモードで約100キロメートルの走行ができるため)通勤による移動需要の90%を排出ゼロにすることができる。このように、トヨタは脱炭素に向けて新技術を用いた多面的なアプローチをしていく。

起点は25年前のEV開発

トヨタの電動車開発の歴史は長い。1996年に「RAV4」のEV版を開発した。技術的には未熟な点もあったが学んだことは多く、それを生かして(電動車の)技術を向上させてきた。そしてHVの「プリウス」を発売し、PHVやFCVを含めて電動車のラインナップを拡充してきた。

私が大いに期待しているのは、電池の技術だ。今も、エネルギー密度(単位体積当たりのエネルギー量)や安全性が高く、耐久性に優れた電池技術を確立するため、多額の投資をしている。

──電池の技術では、9月に車両1台当たりの電池コストを半減させると発表しました。電池も開発コストも高いEVで利益をどう確保するかは業界全体の課題です。