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求められるデータの公共利用 AIは気候変動の敵か味方か

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気候変動の実際の影響がここまで明白となるはるか以前から、データは厳しい予想を示してきた。その深刻な見通しが現実となった今、私たちが直面しているのは、気候危機の克服にデータをどう活用するかという問題だ。

データや人工知能(AI)は気候変動対策に極めて大きな役割を果たすと期待されている。だが、それを実現するにはデータ管理のあり方を大きく変える必要がある。先進国ではデータを商業的な所有物とするモデルが支配的となっているが、こうしたモデルは手放さなくてはならない。デジタルは気候変動対策と親和性が高いとみられているものの、デジタルやインターネット上の活動で排出される温室効果ガスはすでに全体の3.7%と、航空業界に匹敵する。

機械学習の過程で排出される二酸化炭素は、平均的な自動車が製品寿命全体で排出する量の5倍という試算もある。AIの利用が急速に増える中、AIが排出する二酸化炭素も急増する見通しだ。

幸い、AIは二酸化炭素の排出削減にも活用できる。この点で先行しているのが、温室効果ガス排出の約3分の1を占める電力セクターだ。同セクターに君臨する少数の大企業は、電力供給網の最適化にAIが極めて有用なツールとなることに気づいている。再生可能エネルギーは天候による出力の変動が大きく、一方の電力消費パターンも単純ではない。グーグル傘下のAI開発会社ディープマインドが進めるプロジェクトの1つも、風力発電の出力を予測し、最適な時間当たり送電量を丸1日前に確定できるようにすることを目指している。同様の手法は、交通量の予測や農業の管理にも役立つ。

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