イラスト:十時朱視

有名な動画配信プロジェクト「TEDトーク」スタイルでのプレゼンテーションは日本人には合わない。そう感じる人も少なくないかもしれない。10年ほど前に、トヨタ自動車の豊田章男社長がジェスチャーを取り入れ、動き回るスタイルのプレゼンをモーターショーで披露したときは、「やりすぎだ」と眉をひそめる業界関係者もいた。

しかし、それから10年。時代は変わり、リーダーのプレゼンスタイルの主流は、「インフォーマー」(informer)から「パフォーマー」(performer)へと大転換している。前者は演台の後ろで「棒立ち」し、原稿を淡々と「棒読み」して、単に情報を伝えるスタイル。後者はTEDトークのように動き回り、ジェスチャーを交えながら熱の入った訴えかけを行い、聴衆を「総立ち」にさせるスタイルだ。

コロナ禍で、大勢の聴衆を前にしたプレゼンの機会は減ったが、その分、オンラインでのプレゼンの機会が劇的に増加した。アップルやグーグルの発表会のように、「トップや役員、幹部が、まるでユーチューバーのようにプレゼンしなければならない」時代となり、筆者のところにも、「TEDスタイルのプレゼンをコーチングしてほしい」という依頼が増えている。

今、リーダーにはロジック中心の「情報伝達型」から、感情を刺激して行動を喚起する「共感醸成型」への脱皮が求められ始めた。質の高いデリバリー(ボディランゲージやアイコンタクトなど)とコンテンツ(話の内容)、そして高いパッション(熱量)という3つの要素を組み合わせた、戦略的プレゼンによって、聴衆の心をぐっと引き寄せる。そのノウハウこそがこれからのリーダーシップのカギになると考えている。

氷を壊し聴衆と一体化