きうち・たかひで 1987年から野村総合研究所所属。日本経済の分析、ドイツ、米国で欧米の経済分析を担当。2004年野村証券に転籍、07年経済調査部長兼チーフエコノミスト。12年7月から17年7月まで日本銀行政策委員会審議委員、この間独自の視点で提案を行う。17年7月から現職。(撮影:尾形文繁)

欧米では、コロナ対策で中央銀行が導入した異例の資産買い入れ策を解消していく正常化の動きが、にわかに広がり始めた。一方、日本銀行は現状維持を当面続けていく可能性が高く、政策姿勢の差が広がっている。一般に、国ごとの金融政策姿勢の違いは、金利差の拡大から国際的な資金フローの変化を促し、為替市場に動揺などをもたらしかねない。ただし、そうしたリスクが高まるのは、資産買い入れ策の正常化ではなく、政策金利の引き上げの局面だろう。注目は2023年以降だ。

8月末のジャクソンホール会合で、FRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長はテーパリング(資産買い入れの段階的縮小)について、「年内実施が適当と考える」と発言した。遅くとも12月までにはテーパリングの開始が決定される可能性が高い。

他方でパウエル議長は、「テーパリング開始の時期とそのペースは、政策金利引き上げに関する直接的なシグナルではなく、政策金利引き上げにはそれとは異なるより強い検証が必要だ」と説明した。テーパリング開始と政策金利引き上げは別物であり、政策金利引き上げに向けたハードルはもっと高いことを強調したのである。