8月30日、アフガニスタンから米軍が全面撤退した。〈バイデン米大統領は8月31日、米ホワイトハウスで国民向けに演説し、「アフガニスタンでの戦争は今、終わった」と述べ、米同時多発テロをきっかけに始まった20年間の「米史上最長の戦争」の終結を宣言した。30日に完了した米軍の撤退と民間人の退避について「並外れた成功だった」と正当化し、今後は中国との競争をはじめとする新たな脅威や挑戦に対応するために、米国の競争力を高める必要があると訴えた〉(9月1日「朝日新聞デジタル」)。客観的にみて米国はタリバンとの20年戦争に敗北した。敗北の原因の1つは、米国のインテリジェンス分析の弱さだ。米国は偵察衛星、通信傍受、無人偵察機などでさまざまな情報を入手し、ヒュミント(人によるインテリジェンス活動)も多額の資金を投入して行っていたが、米国はアフガン人の内在的論理をつかむことができなかった。

その点、ロシアは米国と異なり正確なインテリジェンス分析を行っていた。日本政府もロシア情報を最大限に活用し情勢分析を間違えなかった。また、退避したいという意思を表明した日本人は全員、アフガニスタンから退避させることに成功した。メディアは「アフガニスタン情勢に関する情報を日本政府がつかめていなかった」とか「退避オペレーションに問題があった」といった批判であふれているが、事情を正確に知ったうえでの評価とは思えない。

8月初め時点で、タリバンがカブールを無血開城させる可能性があるという感触を首相官邸は得ていたので、同月7~11日に米ワシントンを訪問した秋葉剛男国家安全保障局長が米要人にアフガニスタン情勢に関する懸念を表明している。また、退避オペレーションも米軍や英軍と連絡を取って臨機応変に行われた。8月17日に日本大使館員が退避する際も当初予定していた米軍機に近寄れなかったため(それほどカブール空港内は混乱していた)、急きょ英軍機を利用して避難した。緊急事態下において大使館員が臨機応変な対応をしなければ、空港に取り残され事故に巻き込まれる危険があった。