無様なアフガン「敗走」でアメリカは何を失うのか 東大・佐橋准教授に聞く内政・米中対立への影響

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今回の米軍撤退で佐橋教授は「世界におけるアメリカの道義的なリーダーシップを弱めた」と述べた(撮影:今井康一)

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アメリカ軍は当初の予定通り2021年8月末にアフガニスタンから撤退した。アフガンからの「敗走」により、アメリカは何を失い、何を維持しようとするのか。東京大学東洋文化研究所の佐橋亮准教授に話を聞いた。

 

――アメリカがアフガニスタンから軍を撤退させる中、タリバンがあっという間に首都を陥落し復権しました。アフガン市民を見捨ててアメリカ軍が逃げるかのような光景が全世界の目に焼き付きました。

まさにアフガンからの「名誉なき撤退」だ。バイデン政権は恐らく8月末までに計画どおりアメリカ軍を完全撤退させるのだろうが、共和党は無様な撤退を攻撃し、外交における党派対立は激しくなりそうだ。他方で、あの撤退の仕方は、アメリカが20年間かけて育てようとしたアフガンの民主的な市民を見捨てるものであり、世界におけるアメリカの道義的なリーダーシップを弱めたのは間違いない。

そもそも、今年の段階でアフガンには小規模なアメリカ軍しか派遣されておらず、それが現地政府に支えていたのだ。それすらも惜しみ、自分たちが後押ししたガニ政権を放り出した印象を作ったうえで、バイデン政権が今年12月に民主主義国のリーダーを集めた「民主主義サミット」を開催するというのは支離滅裂だ。

アメリカは同盟国からも逃げ出す?

――日本を含めた同盟国への影響は?

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