大屋氏が2020年まで社長を務めたフィリピンのIR「オカダマニラ」(写真:オカダマニラの公式ホームページより)
「観光立国」構想の強力なエンジンとして、菅義偉首相自らが旗振り役となって進めてきたIR(カジノを含む統合型リゾート)の誘致。2020年代後半の開業を目指し、2021年10月からは全国の自治体から、区域整備計画の募集を始める予定だ。
しかし、カジノに対する反対運動に加え、日本で参入を検討していた海外の大手IR事業者の相次ぐ撤退など、そのプロセスは順風満帆と言いがたい。日本初上陸となるIRは、果たして実現するのか。
実は日本にも、IRの運営を経験した人物がいる。2020年までフィリピンのIR「オカダマニラ」の社長を務め、現在は中古車買い取りのカーチスホールディングス社長である大屋高志氏だ。約2時間半にわたったインタビューで大屋氏は、日本人のIRに対する大きな誤解、そして日本版IRへの懸念を指摘した。

撤退する事業者が出て当然

――IR運営に携わってきた立場から、日本で進むIR計画の現状をどう見ていますか。

度重なるIR大手の撤退や横浜市長選における自民党の変わりようなど、国が当初想定したシナリオとは異なる方向に進んでいるとしか思えない。とくに、ここまで多くの企業が手を引いてしまうとは思わなかった。

コンプライアンス面において世界でいちばん高いレベルにあるべきというのが、国による計画設計の大きな柱だろう。カジノ収益に対する高い税率やジャンケット(カジノに顧客を紹介する仲介)業務の一部禁止、入場時のマイナンバーカードの提示といった規制に加えて、入場者のバックグラウンドなどのチェックは世界の中でもそうとう厳しい。

さらに、日本のIRの区域認定期間は当初は開発期間を含めて10年、それ以降は5年だけ。その都度ライセンスの更新時期がやってくる。

企業からすれば、巨額の投資回収に必要な事業期間が保障されていないことになる。数千億円から1兆円の投資に見合わないと考える事業者が出て当然だ。

――各自治体におけるIR誘致への姿勢に気になる点はありますか。

参入を希望する事業者と、本当に重要なことを話し合えていないのではないか。その企業がIRによって、地域をどうしたいのかという「ビジョン」だ。

現実には、自治体が事業者に「いくら投資するか、何人雇用するか、経済波及効果はいくらを見込むか」などと、数字を追い求めている。その結果、「1兆円(をかける投資)の先」を多くの事業者が発信せずにいる。

おおや・たかし/1965年生まれ、1988年立教大学理学部卒業、勧業角丸証券(現みずほ証券)に入社。1999年にドイツ証券へ移籍。アナリストとして約20年間ゲームやパチンコ、IT業界を担当し、2007年にパチンコ商社のフィールズ社長に就任。2019年、同社提携先のパチスロ機メーカーのユニバーサルエンターテインメント傘下で、フィリピンのIR「オカダマニラ」運営会社の社長に就任。2021年6月から現職(撮影:尾形文繁)

――そもそも、IRというビジネスのうまみはどこにあるのでしょう?