英オックスフォード大学教授 苅谷剛彦(かりや・たけひこ)1955年生まれ。米ノースウェスタン大学大学院博士課程修了、博士(社会学)。東京大学大学院教育学研究科助教授、同教授を経て2008年から現職。著書に『階層化日本と教育危機』『増補 教育の世紀:大衆教育社会の源流』『教育と平等』など。(撮影:尾形文繁)

7月19日に英イングランドで新型コロナウイルスに関する規制が大幅に緩和され、社会はコロナとの共生の段階へ移行した。その後、英国を構成するほかの地方政府も追随した。だが、デルタ株による感染拡大は続き、一時は感染者数が6万人を超え、8月下旬の現在でも2万〜3万人の感染者が毎日出ている。人口は日本のほぼ半分であるため、感染レベルは日本のそれよりはるかに高い。

にもかかわらず、政府の方針は揺るぎない。重症患者数も死者数も、法的強制措置を伴うロックダウン(都市封鎖)の頃に比べれば非常に少ないからだ。現状では医療の逼迫にも直面していない。

もちろん、この政策転換を支えているのは、ワクチン接種の成功だ。先進国の中でもいち早く高齢者へのワクチン接種を終え、さらに18歳以上の成人に対する接種も8割(国民全体の6割)に達している。しかも、変異株に対してもワクチンが重症化を防ぐ効果を持つことが、最新の大規模な調査によって明らかにされた。科学的根拠を積極的に集め、公表することも国民の支持に一役買っている。