ほんだ・おうすけ/1974年生まれ。幼少期をアメリカのテキサス州などで過ごす。一橋大学法学部卒業。1996年三菱商事入社。自動車部門の海外営業や事業投資などに従事。グロービス・キャピタル・パートナーズを経て、2007年から現職(提供:DCMベンチャーズ)
コロナ禍での落ち込みを経て、ベンチャー企業への投資熱は再び盛り上がってきた。
2020年の国内ベンチャーの資金調達総額は5222億円と、過去最高だった2019年(5522億円)からやや減少。ただ2021年1~6月は3245億円と上半期として過去最高に(いずれもINITIAL調べ)。一度に100億円以上を集めるベンチャーも珍しくなくなってきている。
とはいえベンチャー大国であるアメリカや中国と比較すると、1社あたりの資金調達規模は小さく、ベンチャーの企業数自体がまだ少ない。業界の最前線にいるベンチャーキャピタルは、こうした日本のベンチャーを取り巻く環境をどう見ているのか。
日本、アメリカ、中国で3000億円以上のファンドを運営するDCMベンチャーズはクラウド名刺管理のSansan(2019年上場)やクラウド会計ソフトのフリー(同)など、現在数千億円規模の時価総額を誇る企業に創業初期から投資してきた。投資を率いた日本代表の本多央輔氏に話を聞いた。

 

――アメリカや中国と比べ、今の日本のベンチャーを取り巻く環境をどう評価していますか。

それぞれの国が独自の進化を遂げているが、日本はまだ成長初期のフェーズだ。1つ特徴があるとすれば、トレンドに引っ張られがちということ。例えば今はSaaS(Software as a Service)ばかり注目されている。フリーは今でこそSaaSの代表的な会社になっているが、僕らが投資した2012年当時、SaaSという言葉を使う人はいなかった。

この現象は”デジャブ”のようだ。2010年代前半、日本ではソーシャルゲームが大流行し、どのベンチャーも消費者向け、それもゲームかグルメをやろうという話だった。こんな会社でこんなに高いバリュエーション(企業評価額)がつくのかと。これは自分がやりたい世界じゃないと感じた。

DCMはその後5年ほど、BtoBのクラウド領域にしか投資しなかった。僕は新卒で三菱商事に入社したが、当時は商社出身者がベンチャーに流れ始めたタイミングだった。彼らが商機を見いだしたのはBtoCではなくBtoB。そうした(ビジネスの経験が豊富な)人たちが注目しているという意味で将来性のある分野だと思った。

さらにアメリカではクラウドが当たり前になり、SaaSの代表格であるセールスフォース・ドット・コムも急成長していた。日本にもクラウドが来ないわけがないと思い、そこからフリーやSansan、ビザスクなどに投資対象を広げた。