ワクチンとデルタ株、時間との戦い
世界経済再開の大試練

「足元のインフレは、リスクでなく、チャンスだ」(欧州中央銀行〈ECB〉関係者)

経済再開とともにドイツやスペインなど一部の加盟国で物価上昇率が2%以上になっているユーロ圏。ECBは7月、物価上昇率の一時的な2%超えを容認する新方針を打ち出し、金融緩和の維持を強調した。冒頭の関係者は、経済再開で熱を帯びる状況を、長年の低成長・低インフレ体質からの脱却につなげたいと言う。

しかし、そんなムードに冷や水を浴びせる状況が現出してきた。より感染力の強い新型コロナウイルス変異株(デルタ株)の拡大だ。デルタ株の感染力(再生産数)は従来株の2倍弱と国内で推定されているが、最近では米疾病対策センター(CDC)が最大3倍弱との可能性を示した。7月以降、欧米や日本、東南アジアなどで感染が急拡大した主因とみられている。

ワクチン接種の進展でつかみかけた世界経済再開の機運は今後、どうなるのか。順を追って読み解いていこう。

先進国は克服できる?

主要国・地域の経済成長見通しを示したのが上図だ。独り別次元を行くのが中国。昨年3月にいち早くコロナを抑え込んで経済を再開し、同年4~6月期にはコロナ前の経済水準を上回った。「今後はむしろ5%台半ばの潜在成長率へ軟着陸していく局面。中国でもデルタ株の感染が出ているが、徹底した接触管理と隔離でコロナ対策は他国より格段に優れているというのが中国市民の感覚だ」と丸紅中国の鈴木貴元氏は語る。

これに対し、ワクチン接種の拡大をテコに今春から経済再開を本格化したのが米国だ。今年4~6月期にはコロナ前水準を突破した。日本や欧州も今年末~来年初めごろにそれへ続く見通しだ。

こうした回復シナリオを持つ先進国だが、変異株の拡大にどう対峙するのか。その1つのモデルケースとなりうるのが英国だ。