日本製鉄、笑顔なき「最高益」の先にいばらの道 2つの大きな課題が迫っている

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生産回復などから足元は絶好調。だが、先行きには大きな嵐が待ち受けている。

過剰生産能力を削減し、日本製鉄は収益体質強化を進めてきた。写真と本文は直接関係ありません(編集部撮影)

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わずか3カ月で大幅な業績の上方修正。日本製鉄のV字回復が顕著だが、決算会見で森高弘副社長に浮かれた様子はみじんも感じられなかった。

8月3日に発表した2021年度第1四半期の純利益は1621億円(前年度同期は420億円の赤字)。これを受けて2021年度通期の純益予想を3700億円と、期初の見通しから1300億円も上方修正した。3700億円を達成すれば新日本製鉄時代まで含めて最高益となる。

2019年度は鉄鋼事業の採算悪化による巨額減損で4315億円の純損失、2020年度もコロナ禍による鉄鋼需要の激減で324億円の純損失を計上していた。

足元の急激な利益増加の背景にあるのが、生産数量の回復だ。単独粗鋼生産は前年度同期比から4割強増えた。この1年ほど国内生産能力削減によって固定費を引き下げ、利益体質に転換したことも効いている。加えて、世界的な鉄鋼需給の逼迫で鉄鋼価格が急上昇。鉄鉱石や原料炭といった主原料の値上がりを吸収してマージンが拡大したことも追い風になった。

トヨタと強気の交渉

好決算をよそに、森副社長が決算会見の中で繰り返したのが、「ひも付き価格是正の取り組みを強化している。当社の今いちばん大きな課題」という点だった。

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