国立情報学研究所 社会共有知研究センター  センター長・教授 新井 紀子(あらい・のりこ)一般社団法人教育のための科学研究所代表理事・所長。一橋大学法学部、米イリノイ大学数学科を卒業。イリノイ大学5年一貫制大学院を経て東京工業大学で理学博士号取得。『AI vs.教科書が読めない子どもたち』など。(撮影:尾形文繁)

書く力を養うには、まずは文章を読めないといけない。自分では読めていると思っていても、意外と誤読しているケースはあるものだ。RST(リーディングスキルテスト)の研究を主導する新井紀子・国立情報学研究所教授に、社会人の読解力に関する分析と今後の課題について聞いた。

──RSTの結果から導かれる社会人の読解力の傾向は。

社会人の「係り受け解析(文の基本構造を把握する力)」や「照応解決(代名詞などが指す内容を認識する力)」など、文章を読むという面では高校生より平均値は高い。問題は「同義文判定(2つの文の意味が同一かどうかを判断する力)」や「具体例同定(理数系教科書や辞書の定義を読み、それと合致する具体例を認識する力)」。ここの能力の分散が大きく、低い人は中学生以下のレベルだ。

例えば、偶数と奇数の読み分けができない。2で割り切れる整数が偶数だが、0(ゼロ)を偶数と認識できない。この問題の正答率は社会人で32%と、50%程度の小学校6年生より低い。不正解の理由を聞くと、「0は特別な数字だと思ったから」といった声が上がる。定義に無関係な解釈をしてしまい、理系テキストの読解に失敗している。こういった読み方を繰り返して理数系への苦手意識が固着した層に多いタイプの誤りだといえる。