慶応義塾大学経済学部教授 太田聰一(おおた・そういち)1964年京都市生まれ。京都大学経済学部卒業、ロンドン大学大学院修了(Ph.D)。名古屋大学大学院経済学研究科教授を経て2005年から現職。専門は労働経済学。著書に『若年者就業の経済学』、共著に『もの造りの技能─自動車産業の職場で』『労働経済学入門』など。(撮影:梅谷秀司)

日本がコロナ禍に見舞われて1年半が過ぎた。今後の対応を考えるうえで、労働市場で昨年起こった事態について中間的な総括をすべき時期だと思われる。筆者の見方を紹介したい。

総じて、昨年の労働市場全体のパフォーマンスは大幅な悪化を免れた。最初の緊急事態宣言の頃には大失業の到来を予想する向きもあったが、実際の完全失業率(季節調整値)は10月に記録した3.1%が最高で、その後は安定的に推移している。雇用調整助成金を用いた休業の効果もあり、先進国の中ではかなり低い水準といえる。

就業者数については一昨年と比べて48万人減少したが、リーマンショック時の2008〜09年に生じた減少の約半分であった。今回の特徴は、75万人に及ぶ非正社員の大きな減少があった一方、正社員の雇用は、大幅減だったリーマンショック時と異なり36万人も増えたことだ。そしてその大部分(33万人)が女性正社員の増加によりもたらされた反面、非正社員の大幅減でも女性が3分の2を占めた。