イラスト:髙栁浩太郎

近年、相続対策を検討する場面で、大きな注目を集めているのが「家族信託」だ。

親が仕事をリタイアしても20~30年続く老後。その間に認知症を発症し、本人名義の預金や証券口座の金融資産を介護費用などのために自由に使えない、“資産凍結”が頻発している。年金収入や預貯金で賄いきれず、自宅売却で介護費用を捻出したくても、本人の判断能力低下で有効な手続きができない事態が増えている。

判断能力が著しく低下・喪失した人を守るには、本人に代わり後見人が財産管理する「成年後見制度」がある。だが成年後見には限界や制約も挙げられる。

成年後見制度は認知症の高齢者、知的障害などのある人の権利・財産を保護すべく国が用意した、セーフティーネットだ。誰もが等しく利用できる汎用性と信頼を維持しようと、堅実性や透明性が求められ、3つの負担が課せられる。

1つ目は事務的負担である。判断能力のない親を支える家族がいれば、家族が後見人になるのが理想でこれを親族後見人という。後見人は使途不明金が生じないよう、厳格な帳簿の作成や高額な領収書の保管を求められるとともに、家庭裁判所または後見監督人に対し、定期的に財産目録や収支状況を報告しなければならない。

2つ目は経済的負担だ。被後見人の金融資産が多いと、親族後見人には、司法書士や弁護士などの後見監督人が就く。後見監督人はボランティアではないので、家庭裁判所が決定する月1万~2万円の報酬を、被後見人が死亡するまで、ずっと被後見人の資産から支払わなければならない。諸事情によって、司法書士や弁護士などの専門職が職業後見人として就任する場合、月2万~6万円程度の報酬が生涯発生し続ける。長寿に伴う金銭負担の増大リスクを認識しておくことが必要だ。