「自由で開かれたインド太平洋構想」は日本の武器だ(今年3月の日米豪印首脳会合)(Doug Mills/The New York Times)

「中国共産党は昔からやがて米国に取って代わることを企む一方、西側にはその野心を隠してだましてきた」という考え方がある(いわゆる「100年マラソン」説)。しかし、このような見方で中国全体を理解するのは大きな誤りだ。30〜40年前の中国でそんな考えを公言すれば、「医者に診てもらえ」と言われるのがオチだっただろう。当時は「中国は大きな後進国だ」という劣等感にさいなまれた人が多数派だった。

当時主流だった考えに「接軌(ジエグイ)」というのがある。線路が本線に合流していくさまを表す言葉だが、転じて世界で主流の経済・政治体制に中国が合流していくイメージを表していた。中国側が政治でも西側体制への合流を図ると言ったわけではないが、2つの体制間の距離が縮まっていく未来像があった。香港・台湾をめぐる「一国二制度」について、鄧小平が「50年変えない。50年の後はもっと変える必要がなくなる」と述べたのもそのためだ。

こうして30〜40年前を振り返ると、こんにちの中国の意識との違いの大きさがわかる。何が中国を変えたかといえば、西側との力関係であり、西側を見る目線の角度だ。中国がWTO(世界貿易機関)加盟を果たして以来、20年が経つ。その間にリーマンショックが起き、コロナ禍も世界を襲い、「西側先進国より中国のほうがうまく対応している」と中国人が感じる局面が何度もあった。

並行して西側の政治・経済体制は疲弊した。とくに昨年以降、米国がコロナ禍で60万人を死なせ、自分たちが選挙で選んだバイデン大統領を3割近い国民が信任しないのを見て、多くの中国人はあきれ果てた。