世界のさまざまな問題について、アジアの視点から積極的に発言するシンガポール国立大学のキショール・マブバニ名誉フェロー。国連での活動も経験するなど、大国に翻弄される国際情勢の裏側を知り尽くした人物だ。

シンガポール国立大学名誉フェロー キショール・マブバニ(Kishore Mahbubani)1948年シンガポール生まれ。シンガポール外務省で国連大使や国連安全保障理事会議長、事務次官などを歴任。2017年までシンガポール国立大学リー・クアンユー公共政策大学院長。アジアを代表する知識人として欧米で知られる。主な著書に『大収斂』『「アジア半球」が世界を動かす』など。

[ Point ]

・米国は中国の力を過小評価している

・21世紀の戦場は経済。中国が有利に

・中国が2位の間に多国間ルール形成を

──トランプ政権に続きバイデン政権でも米中対立が増しています。

米中間の対立は惨事としか言いようがない。両国間の対立は今後さらに増す可能性がある。だが、完全に不必要と言いたい。いま私たちはアジアの繁栄を持続させなければならないし、新型コロナ禍に打ち勝たなければならない。また気候変動といった大きな問題もある。こういった課題の克服は、米中間の地政学的な争いよりも重要だ。米中は互いに歩み寄り協力するほうが賢明だと認識するべきだ。

ある国の力が強大になろうとすれば、1番の強国はその国を押し倒そうとする。(冷戦時に)米国はソ連に、1980年代の日本にも打ち勝った。同じように今は中国を押し倒そうとしている。しかし、中国はソ連や日本とは違う。4000年の歴史を持ち、人口は米国の4倍で、強い統率力に恵まれた国だ。これまでのライバルより、中国はさまざまな点で優勢だといえる。つまり、米国は中国の挑戦を過小評価している。

多くの米国人は、中国共産党が中国人民を抑圧している、中国人民が共産党を一掃したい、と信じている。それは間違いだ。(信頼性のある)米ハーバード大学の調査では、中国国内での中国共産党への支持率は、2003年の86%から16年には93%に上昇している。