気候変動対策とともに激変するエネルギー秩序の中で、中国はどのような地位を占めるのか。米中の新冷戦は世界のエネルギー市場にどのような影響を与えるのか。日本は新秩序で勝者になれるのか──。エネルギー問題の世界的権威で多数の著書を持ち、英IHSマークイット社の副会長を務めるダニエル・ヤーギン氏に聞いた。

[ Point ]

新たなエネルギーで中国は極めて優位に

・2050年に向け鉱物の重要性が増大

米中対立が生む規制の影響に厳重注意を

IHSマークイット副会長 ダニエル・ヤーギン(Daniel Yergin)1947年生まれ。米イェール大学卒業、英ケンブリッジ大学で博士号取得。エネルギー問題の権威として米エネルギー省長官の諮問委員会委員などを歴任。著書に『石油の世紀』(92年にピュリツァー賞)や『The New Map: Energy, Climate, and the Clash of Nations』(日本語訳版は11月刊行予定)など。(写真:IHSマークイット)

──2060年までの地球温暖化ガス排出実質ゼロ達成を宣言した中国の狙いと実現可能性をどう見ていますか。

中国にとって、その宣言の意味は気候変動や都市公害の問題に限ったものではない。そこには地球規模の課題において、自らをリーダーとして第一線に置こうとする中国の狙いがある。宣言が中国の経済、そして政府機関や企業の優先事項として反映されていくインパクトの大きさを、誰もが感じ取ることができるだろう。

ただし、中国経済は石炭への依存度が非常に高く、その需要も増えており、排出ゼロは極めてチャレンジングな目標だと多くの中国人自身が認識している。だからこそ中国は、大部分の国々が掲げた50年より10年遅い60年という達成目標を宣言した。

──エネルギーの新秩序において中国は勝者となり、OPEC(石油輸出国機構)やロシアなどの産油国は敗者になると指摘しています。