経済財政諮問会議で発言する菅首相。内政分野でも全体を俯瞰した諮問会議が必要だ(毎日新聞社/アフロ)

世論も専門家も危なっかしいとみる中で、政府はずるずると東京五輪開催へと突き進んでいる。そこへ東京都議会選挙があり、当初の予想とは大きく異なって、自民党は2009年の衆議院総選挙敗北直前の都議会選挙で得た38議席すら確保できなかった。与党内に現状への焦りも見られる一方で、菅義偉首相の談話は「謙虚に受け止めたい」であった。

しかし、7月7日に東京の新型コロナウイルス新規感染者数が900人を超えると突如、政権は緊急事態宣言の発令へと舵を切った。あらゆる問題について、いかなる状況認識を持ち、何を考えているかを明示することなく進む。それが現政権の力量といえるだろう。

だが、状況認識を打ち出して方針を決めることが制度の中に仕込まれたものもある。経済財政諮問会議では事後的な公開の原則の下で、経済政策の基本方針が話し合われる。6月に決定された骨太の方針では、「21世紀半ば頃を見据えて、将来のあるべき経済社会に向けた構造改革・対外経済関係の基本的考え方を、経済財政諮問会議に有識者議員を中心として専門調査会を設置し、取りまとめる」と規定している。経済のあるべき方向性を決めるため、状況認識をすり合わせビジョンを構想する手続きが、ここでは整備されている。

これに対して、新型コロナ対策は、菅首相、西村康稔経済財政担当相、田村憲久厚生労働相、河野太郎ワクチン担当相と政府内でも意思疎通が途切れがちであり、さらには現場で感染対策の指揮を執る都道府県知事とは政党対立も相まってバラバラである。

その典型が6月後半の感染症専門家の有志による東京五輪開催についての提言であった。これは新型コロナの基本的対処方針分科会などの場で議論することができなかったため、「有志」として意見表明をしたとされている。すでに会議そのものが肝心の場面で動かないことが見て取れる。それでも「有志」の意見から、東京五輪の開催にどの程度リスクがあるのかを国民の多くが感じ取れたのである。