コロナ禍の財政出動で高まるインフレ懸念の下、パウエル議長は難しい舵取りを迫られる(Melissa Lyttl / The New York Times)

経済の変化は目まぐるしく、現状を理解することすら容易ではない。低迷していた米国の雇用と物価はわずか数カ月で一変。今では人手不足が広がり、高インフレへの警戒感が高まる。こうした異様な景気回復の中、雇用が増え、賃金も上がっているのに、再就職にまるで関心がないように見える働き盛りの人々が何百万人もいるのはどうしたことか──。

6月16日の連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見で、連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長が強調したのは、2010年代の金融緩和から学んだ教訓だった。すなわち、経済の何が変わったかではなく、「何が変わっていないか」という論点だ。コロナ禍で経済が根本から変わったと結論づけようとする動きに同氏は抵抗を示した。

パウエル氏の念頭にある、10年代からの教訓とは次のようなものだ。まず、雇用にはまだ潜在的な余力がある。労働市場の盛り上がりは、多くの経済学者がかつて想定していたよりも、さらに大規模かつ長期に維持され、しかも幅広い恩恵をもたらす可能性がある。また、インフレに歯止めをかける強力な構造要因も多数存在する。これらの理由からFRBは、経済の完全復活を早期に止めるリスクを冒すのではなく、利上げに慎重を期さなくてはならない──。