大正大学地域構想研究所教授 小峰隆夫(こみね・たかお)1947年生まれ。東京大学卒業。経済企画庁経済研究所長、物価局長、調査局長、国土交通省国土計画局長などを経て、2020年4月から現職。日本経済研究センター理事・研究顧問も務める。著書に『人口負荷社会』『日本経済論の罪と罰』『政権交代の経済学』など。

私はかねて、日本のマクロ経済政策運営について、透明性が比較的高いと感じてきた。「月例経済報告」「経済財政白書」「政府経済見通し」「経済財政運営と改革の基本方針(骨太方針)」「中長期の経済財政に関する試算」など定期的に政策運営情報が提示されているからである。

受け手側でもこれらの情報を丁寧に分析することが求められる。その1つとして、前年(または前月)のものとの記述の違いに焦点を当てるという手法がある。記述内容を変えたということは、必ず政府の判断に何らかの変化がある。この手法を6月に閣議決定された骨太方針に適用して、2020年の骨太方針と比較してみると、次のような違いに気づく。

第1は、景気の落ち込みへの対応である。20年も21年も1〜3月期のGDP(国内総生産)がマイナス成長になるなど、経済の落ち込みが明瞭だったのだが、これにどう対応するかについてのスタンスには違いが見られる。すなわち、20年の方針では「需要を取り戻す消費喚起策を展開することにより、デフレへの後戻りを回避する」「公共投資については、各種事業の円滑かつ着実な執行等により景気の下支えに万全を期す」と述べられており、政策的な需要喚起を目指すという方向が示されている。