スエズ運河で今年3月に起きた大型コンテナ船の座礁事故は、国際物流の寸断が世界に与える影響の大きさをまざまざと示した(写真:EPA=時事)

国際海運業界の深刻な船員不足は、現役のクルーに過剰な負担を強いている。

彼らのストレスが限界を超えれば、世界の物流の安定を根底から揺るがしかねない。東洋経済の提携先の「財新」による、レポートの後編をお届けする。

前編:『国際海運業界、「中国人クルー」争奪戦の深層』

「船員不足の問題に比べれば、スエズ運河の事故の影響は取るに足らないものだ」――。

今年5月、国際船舶管理者協会のマーク・オニール会長はイギリスのフィナンシャル・タイムズの取材に対してそう発言した。

エジプトのスエズ運河で今年3月に起きた大型コンテナ船の座礁事故は、全世界に衝撃を与えた。欧州とアジアを結ぶ物流の大動脈がわずか6日間詰まっただけで、世界中の企業活動や市民生活に多大な影響が及ぶことをまざまざと示したのは記憶に新しい。

だがオニール会長に言わせれば、国際海運業界が直面する船員不足の深刻さは、スエズ運河の事故とは比較にならない未曾有の危機なのだ。

前編で述べたように、船員不足の引き金を引いたのはインドから始まった新型コロナウイルスの変異株の大流行である。その影響により、船主たちは国際航路の乗組員の半分近くを派遣していたインドやフィリピンの船員を採用できなくなった。

船主たちは慌てて、中国人船員の採用を増やすことで対応しようとしている。だが、仮に必要な人数のクルーを確保できたとしても、次なる難題が待ち構えている。変異株の流入を防ぐために世界中の港が水際対策を強化し、乗組員の円滑な交替が妨げられていることだ。