新型コロナウイルスの変異株の出現で、国際貿易を支える船員の需給に構造変化が起きている。写真は中国広東省の大規模コンテナ港(塩田港集団のウェブサイトより)
世界の貿易を支える国際海運業界で、中国人クルーの争奪戦が起きている。その理由を探ると、業界が直面する未曾有の「船員不足」の実態が浮かび上がった。
船員不足は世界の物流を狂わせ、日本の製造業を悩ます半導体不足を上回るインパクトをもたらしかねない。東洋経済の提携先である「財新」のレポートを前編、後編でお届けする。

 

中国人船長の紹波(シャオ・ボー)氏は、船上での勤務をもう8カ月余り続けている。にもかかわらず、彼は(上陸して休暇を取ることなく)次の航海に出る決心をした。紹氏によれば、国際海運業界では(船員の雇用者である船主が)インドや東南アジア出身のクルーを下船させ、中国人に置き換える動きが加速している。彼のようなベテラン船長は、今や引く手あまたなのだ。

「船主は私たちに(下船せず)船上で勤務し続けてほしいと望んでいる。少し前まで月4000ドル(約44万円)だった上級職の船員の賃金相場は、月5500ドル(約61万円)に上がった」(紹氏)

全世界の貿易量の9割は、海上輸送によって運ばれている。穀物や石油、鉄鉱石など代表的なコモディティー(商品)はもちろん、衣料や家電製品などの消費財からマスクや防護服などの防疫物資に至るまで、国際輸送の大部分を陰で支えているのが紹氏のような船乗りたちだ。

最近、中国人船員の求人が急増している背景には、新型コロナウイルスの世界的大流行(パンデミック)が引き起こした、船員の需給の構造変化がある。インドで見つかった感染力の強い変異株(デルタ株)の流行が東南アジアにも広がり、船員の供給に深刻な打撃を与えているのである。