日覺社長は、経営体制変更の背景に投資家からの意見があったと明かした(撮影:梅谷秀司)
「重要な経営方針は、会社をよくわかっている社内の人間で決めるべきだ」。折に触れてそうした考えを述べてきた東レの日覺昭廣社長。
だがそんな東レも昨年、ついに経営体制の見直しに動いた。従来は社内取締役が17人、社外取締役が2人だったが、社内取締役を8人に減らし社外取締役を4人に増やすことで、社外取締役比率を「3分の1」に引き上げたのだ。
自身の経営哲学とのせめぎ合いの中で最低限の対応をとった日覺社長は、「いい加減なアイデアで決めた数字で企業を縛るべきではない」と話す。
前編:「経営を欧米向けにわかりやすく。おかしな話だ」

 

――今回のコーポレートガバナンス(CG)・コードの改訂では、上場企業の社外取締役の割合を少なくとも3分の1以上にすることを求めています。
 
 3分の1以上や過半数といった数字にはそもそも何の根拠もないし、まったく意味がない。

もし、誰かが経営の現場で何が起きているのかといった事実を調査して、「課題の本質原因や不祥事が起きる理由は社外取締役が3分の1以上いないからだ」という分析結果に至って決めた数字なら、多少は意義があるかもしれない。

だが実際は、経営経験のない人が連想ゲームのように何となく決めた数字だろう。社外取締役の比率は企業の自主性を尊重するべきだ。いい加減なアイデアで決めた数字で企業を縛るべきではない。

このままだと賛成できない

――それでも、東レは2020年6月の株主総会を経て、「社外比率3分の1以上」という基準に合わせました。

日本の金融機関や機関投資家では(投資家の行動規範であるスチュワードシップ・コードの強化で)投資方針と議決権行使の結果を開示して外部に公表することが求められるようになってきた。

例えば、ある機関投資家が「社外取締役が3分の1以上でない企業への投資は推奨しません」などの方針を公表したうえで、後で議決権行使がその方針に沿っているかの結果も公表しなければならない。

それで、以前までは「(社外取締役が3分の1以上いなくても)東レのガバナンスは問題ない」と言ってくれていた機関投資家から、「これからは今までのようにはいかなくなる」と言われるようになった。