6月29日、2022年3月に行われる韓国大統領選への出馬を表明した前検事総長の尹錫悦氏(写真:EPA=時事)
2022年3月に行われる韓国大統領選。革新政権である文在寅政権に正面から対抗できる人物との下馬評が高かった尹錫悦(ユン・ソクヨル)前検事総長が6月末、保守派の大統領候補としてついに出馬を宣言した。
その直前にも、李俊錫(イ・ジュンソク)氏が36歳の若さで最大野党「国民の力」代表に選出され、韓国政界に大きなうねりが生じ始めている。
投票日まで1年を切った現時点で、今後の大統領選の行方はどうなるか。アナリストでアジアリスクモニター代表のロー・ダニエル氏に聞いた。

前検事総長の出馬待望論はなぜ起きた

――文在寅政権と対立し検事総長を辞職、それ以前からも保守系で次なる大統領候補と評価されてきた尹錫悦(ユン・ソクヨル)氏が立候補を宣言しました。彼はなぜ大統領候補としての評価が高まったのでしょうか。

本人が政治家になるという意思を明らかにする以前から、韓国の保守層は尹氏を次期大統領候補にあげ始めた。これは非常に異例な現象だ。

尹氏は1961年生まれで、大学院までの学生生活以外に営んだ唯一の社会生活が33年間在職した検事だ。ごく単純な技能職の人生を生きてきた。「政治は総合芸術」という表現があるが、彼は政治とは程遠い人生を生きてきた。

そのような人が政界入りする前から、大統領候補になることを熱望されてきた。これは、韓国保守層の挫折と危機感で説明するしかない。

戦後の韓国社会の主流だった「親米」「親市場」を志向する保守層は、金大中(キム・デジュン、大統領在職1998~2003年)、盧武鉉(ノ・ムヒョン、同2003~2008年)、文在寅(ムン・ジェイン、2017年~)につながる進歩(革新)勢力が、韓国政治の主流として定着することに対し、挫折感と恐怖感を持っている。そのような心理が圧縮された対象が尹氏だと言える。