一度は“死んだ”薬が日の目を見た。

米国の食品医薬品局(FDA)は6月7日、製薬大手エーザイと米バイオジェンが共同開発していたアルツハイマー型認知症治療薬「アデュヘルム」(一般名アデュカヌマブ)の製造販売を承認した。世界で初めて、アルツハイマー病の原因物質に直接働く治療薬が誕生したことになる。

FDAに承認された「アデュヘルム」。米国ではすでに使用が始まっている

アルツハイマー病の患者は、軽度認知障害(MCI)の患者も含めると世界で5000万人、日本国内にはそのうち560万人がいると推定されている。そうしたアルツハイマー病の患者と家族にとって朗報なのはもちろん、エーザイにとっても巨大市場で新薬の開発に成功した経営上のインパクトは計り知れない。

発表日からエーザイ株には買い注文が殺到。2日連続でのストップ高となった。足元の株価は、発表前に比べ5割高くなっている。

これまでのアルツハイマー病薬には病気の進行を根本的に止める働きはなく、症状を一時的に緩和するだけ。病気の根本原因に作用し、病状の進行を遅らせる薬はない。世界の死因トップ10の中で、予防法や治療法が確立されていないのはアルツハイマー病だけだ。

それだけに世界の巨大製薬企業はこぞってアルツハイマー病薬の開発に取り組んできた。だがほとんどの開発は失敗し、製薬企業や一部の研究者の間には治療薬開発への悲観論もささやかれていた。