英オックスフォード大学教授 苅谷剛彦(かりや・たけひこ)1955年生まれ。米ノースウェスタン大学大学院博士課程修了、博士(社会学)。東京大学大学院教育学研究科助教授、同教授を経て2008年から現職。著書に『階層化日本と教育危機』『増補 教育の世紀:大衆教育社会の源流』『教育と平等』など。(撮影:尾形文繁)

東京五輪は有観客での開催が検討されている。「専門家」と政治家の見解の違いが際立つ場面もあった。だが、どの議論を見ても明確な科学的根拠や証拠は国民に示されず、政府の開催への強い意志だけが伝わってくる。

どの専門家の見解がより信頼に足るか。専門外の素人は判断の基準を持たない。それでも、専門家が認める学術誌に掲載されたか、信頼に足る専門家がお墨付きを与えているか、結論に至る手続きを明示しているか、などの透明性が確保されれば、根拠の見えにくい見解と根拠を明示した見解の区別はできる。

私が住む英国では6月21日に予定された規制緩和策を延期することが決まった。発表時には、専門家の見解が最新のデータとともに示され、それを参考に政治的決定が下されたことが伝えられた。