最低賃金をめぐる議論が今年も始まった。菅政権は「早期に1000円」を目指すとしているが、はたして実現できるのか(撮影:今井康一)
毎年恒例の最低賃金の議論が今年も6月から始まった。2012年以降、8年連続で最低賃金は大幅に引き上げられてきたが、今年は菅義偉政権が「より早期に全国加重平均1000円を目指す」ことを目標に掲げている。
最低賃金をめぐり、企業経営や労働の現場でいま何が起きているのか。茨城県の筑波山のふもとで旅館業を経営する吉岡鞠子氏、労働問題の第一人者である濱口桂一郎氏、全国の生協で働く人たちを束ねる柳恵美子氏の3人の意見を聞いた。

「最低賃金以外の待遇改善策も考えて」

筑波山江戸屋代表取締役/吉岡鞠子

よしおか・まりこ/茨城県つくば市で390余年続く老舗旅館の10代目女将。2006年から10年間、中央最低賃金審議会の使用者側委員を務めた(写真:筑波山江戸屋)。

最低賃金の引き上げばかりが従業員の待遇改善策として取り上げられるのは、中小企業の経営者としては「正直厳しいな」というのが素直な気持ちです。

筑波山江戸屋には従業員に対するいろんな手当てがあります。例えば、旅館業という特性を生かして、知り合いの宿に研修として泊まることができたりします。四季折々の豊かな自然や伝統的な神社、お寺といった地域の環境を含め、ここで働いているから得られるメリットは小さくないと思います。

大切なのは、楽しく働けることではないでしょうか。私がここに嫁いできたころは、誰も新入りに仕事を教えず、「苦労しないと駄目だ。人を見て学べ、仕事とはつらいものだ」と言われました。今はまったく違います。そういう職場環境を変えてきたという自負はあります。