グローバル化と自由主義経済を謳歌する時代は終わりを迎えた──。経済同友会が今年4月にまとめた提言「強靱な経済安全保障の確立に向けて」は、国家の安全保障と企業経営を一体に考えるべきだ、という強いメッセージを発して話題を呼んだ。

背景にあるのは、深刻化する米中間の対立だ。軍民融合路線を推し進める中国に対し、米国は輸出規制を強化している。2019年5月には中国ファーウェイに対する事実上の禁輸措置を発動し、20年8月に米国の技術が関わる半導体やソフトがファーウェイに渡るルートを完全に遮断した。

自国産業の育成・振興も競い合っている。両国は先端半導体をはじめとする国産サプライチェーンの構築を急ぎ、兆円単位の巨額支援を行うことを決めている。

対立に拍車をかけているのが人権問題だ。新疆ウイグル自治区での人権抑圧に対し、今年3月に米国は英国、EU(欧州連合)、カナダと連携し制裁措置を実施。これに対し中国は内政干渉だとして反発、すぐさま報復制裁を発動した。

新型コロナ禍による社会の不安定化や、マスクなどの医療品、ワクチンの不足によって世界的に自国優先主義が先鋭化している。米中を起点とした覇権争いは、沈静化する兆しが見えない。

経済同友会の提言はそうした問題意識に基づく。「経済力や先端技術が外交交渉の武器になっている中、経営者が安全保障に無関心であってはならない」と、経済同友会副代表幹事(国際問題委員長)でJSR名誉会長の小柴満信氏は危機感を示す。