東京財団政策研究所上席研究員 早川英男(はやかわ・ひでお)1954年生まれ、愛知県出身。東京大学経済学部卒。米プリンストン大学経済学大学院にて修士号取得。77年日本銀行に入行後、長年にわたって主に経済調査に携わる。調査統計局長、名古屋支店長、理事などを歴任し、2020年4月から現職。著書に『金融政策の「誤解」』。(撮影:梅谷秀司)

脱炭素に向けた動きが世界で加速している。菅首相も、就任来立て続けに脱炭素目標の強化に動いた。気候変動を人類の最大の将来リスクの1つと位置づけるなら、各国が脱炭素の取り組みを強化するのは当然ともいえる。

だが、自らの利益追求を目的とする企業が脱炭素の目標を掲げ、これを実現しようとするのはなぜなのか。企業が脱炭素に努めても、その成果を享受するのは自社だけではないという「外部性」を考えればなおさらである。そこには金融の力と世論・政策が相乗的に働いていることを理解する必要がある。

まず、金融の世界には巨大な機関投資家が存在する点に注意しよう。世界中の資産をポートフォリオに取り込んだ機関投資家であれば、その投資家に「外部」はない。だから、十分大きな機関投資家には、気候変動をも考慮するインセンティブが生まれるはずである。