実力も運のうち 能力主義は正義か?(マイケル・サンデル 著/鬼澤 忍 訳/早川書房/2420円/384ページ)書影をクリックするとamazonのサイトにジャンプします。
[Profile] Michael J. Sandel 1953年生まれ。米ハーバード大学教授。専門は政治哲学。80年代のリベラル=コミュニタリアン論争で脚光を浴びて以来、コミュニタリアニズムの代表的論者として知られる。講義の名手としても著名。著書に『これからの「正義」の話をしよう』など。

「運も実力のうち」という慣用句はよく聞くが、「実力も運のうち」というのはどうだろう。「実力」という言葉はフェアに聞こえるが、それが単に「生まれ」という「運」による幻想にすぎないとしたら。

そうした不都合な真実に切り込んだのが、米ハーバード大学のマイケル・サンデル教授による本書である。原題は“The Tyranny of Merit”、直訳すれば「能力の専制」だが、巻末の解説によれば“merit”の原義は日本語の「能力」よりも「功績」に近いという。

つまり、この原題が表しているのは「功績、とくに学歴という結果によって人生が決まってしまう能力主義(メリトクラシー)という仕組みの横暴」となる。