長期的不平等というと経済学では長年、南北問題のような国際的なそれが議論の種だったが、ここでは家計間でのそれを考える。「総中流社会」の中で一時忘れられたかに見えたものの、家計間の不平等は少なくとも『資本論』の時代からリアルであり続けてきたし、「格差社会」の言葉の下にまた深刻視されている。

家計間での長期的不平等については、経済理論は極めて悲観的であり、その多くが不平等の極限までの拡大を予測している。とりわけ、家計の貯蓄行動の大きな要因たる「我慢強さ」=「将来のことにどれだけ重きを置けるか」の差異が長期的不平等の強い要因だとわかっている。「我慢強さ」というと主観的であやふやな要因に見えるが、長期においてはこれの差異がもたらす不平等に抗するのは絶望的に難しい。

「我慢強さ」は時間割引率=「来期の効用(満足度)を何%割り引いたうえで現在の効用として換算するか」で記述される。例えばこれが30%ならば、今期の効用100を得るために来期の効用130を失ってもいいことを意味する。割引率は、その数字が小さいほど我慢強く、大きいほどこらえ性がないことを意味する。