なりすまし 正気と狂気を揺るがす、精神病院潜入実験(スザンナ・キャハラン 著/宮﨑真紀 訳/亜紀書房/2420円/466ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。
[Profile]Susannah Cahalan 1985年生まれ。ジャーナリスト。米ワシントン大学を卒業後、「ニューヨーク・ポスト」社に勤務。報道記者として活躍するが、ある日突然、自己免疫性脳炎という難病を罹患。その闘病記がシルリアン優秀賞を受賞。著書に『脳に棲む魔物』がある。

本書の著者でジャーナリストのスザンナ・キャハランは、突然、抑うつ状態におちいった。次に精神病症状が現れ、幻覚を見るようにもなる。症状は悪化していき医療担当チームは彼女を統合失調症と診断、「精神科病院への移送」を検討した。

しかし、それは誤診だった。彼女は自己免疫性脳炎という病を患っていたのだ。ある神経科医が気づかなければ、重度の統合失調症患者として効果のない抗精神病薬を処方され続け、回復不能な障害を負う可能性があった。彼女はこのときの経験を『脳に棲む魔物』というタイトルの本にして出版。同書はベストセラーとなり映画化もされた。

そんな著者が1973年に『サイエンス』誌に掲載されたデヴィッド・ローゼンハンの論文「狂気の中で正気でいること」に興味を持つのも当然だろう。これは精神医学界に衝撃を与え、後に業界の大変革へと繋(つな)がった論文だ。