居住や移住、通勤などの人の動き、そして企業の生産活動、貿易といった経済活動は、空間的には不均一に分布している。大都市の立地や、それぞれの都市の主たる産業を観察すれば、その空間的な偏りは明らかだろう。都市内部でも、例えば古書店街やカレーの街として知られる東京・神保町のように、特定の場所に特定の経済的機能が集中(空間集積)するケースは多い。

本稿では、「経済活動の空間的な分布」の基礎理論を簡潔に説明したうえで、経済活動と環境問題の相互作用を定量的に探るという先端的な実証研究を紹介したい。

多くの企業が立地し消費財の供給が豊富な場所に労働者が引きつけられることを前方連関効果と呼ぶ。一方、企業が消費財の需要の大きい地域へ引きつけられることを後方連関効果と呼ぶ。これら2つの効果の相互作用から生じる空間集積の自己増強的な性質を導き出したのが、ノーベル経済学賞を受賞したポール・クルーグマン教授の1990年代初頭の成果だ。

ほかにも、知識波及の容易さや市場取引費用の安さなど、空間集積が起こるメカニズムは数多い。一方、競合相手が少ない・土地代が安いなどの理由から人や企業が密集していない場所で経済活動を行う誘引、すなわち分散のメカニズムも多い。また、経済活動を行う場所や取引量は輸送費の影響を受ける。これらの集積力と分散力のバランスからさまざまな経済活動を空間的に説明できる。

筆者がとくに注目しているのは、経済活動と環境問題の相互作用について定量的空間モデルを用いて理解することだ。まず、米マサチューセッツ工科大学のクレア・バルボニ教授の研究を紹介する。