行きすぎたキャンセルカルチャーの現状には、ノーム・チョムスキーら言論人も警鐘を鳴らす(AP/アフロ)

「キャンセルカルチャー」の嵐がやまない。聞き慣れない言葉かもしれないが、定義もはっきりとしない。典型的なケースでは、発言や行為が「差別的」とされてSNS上で炎上が起き、当事者の仕事がすべて「キャンセル」される。命名の由来だ。

なぜ問題か。差別批判はもっともだが、炎上対象となった発言が何年も前だったり、差別の意図がなかったりした場合でも、謝罪は無視され、たちまち仕事を奪われる。3月、少女向け雑誌『ティーンヴォーグ』の編集長は10年前、17歳のときのツイートが同性愛者に対し差別的だとされ、辞職を余儀なくされた。ニューヨーク・タイムズ(NYT)紙のベテラン記者は2年前に高校教育の場で差別問題を議論する際に差別語を使ったと問題視され、2月に辞職した。

今の差別意識の基準で過去を裁く。学術論文の引用や回覧でさえも問題化される。多くの場合はSNSで炎上して騒ぎとなり、時に当事者は生計を断たれる。抗議が押し寄せ不買運動でビジネスに差し障りがあるから、議論もなくキャンセルで事態を収める。そうした状況に左右を問わず批判の声が上がり出している。