中国人民銀行総裁を2018年まで3期15年にわたり務めた周小川氏は、中国を代表する開明派のテクノクラートの1人だ。現在も中国金融学会会長として発言を続けている(写真:アフロ)
今やアメリカとしのぎを削る「デジタル強国」となった中国。インターネット上のデジタル・プラットフォームを対象とする「デジタル税」について、中国の政策立案者はどんな見方をしているのか。東洋経済の提携先である「財新」による、中国人民銀行(中央銀行)前総裁の周小川(ジョウ・シャオチュアン)氏への独占インタビュー後編をお届けする。
周氏は、デジタル・エコノミーに固有の問題と既存の税制で対応可能な問題を注意深く区別すべきだと指摘し、デジタル税の議論が安易な新税創設につながらないよう戒める。また、国際社会が気候変動への対応など地球レベルの共通課題に取り組むため、グローバルな公共財源たりうるデジタル税の設計を提唱する。
インタビューの聞き手は財新記者:凌華薇、于海栄、程思煒

 

※前編『中国はデジタル税の議論を通じ発言権確保を』から読む

デジタル税の効果だけに頼るべきではない

――付加価値税や売上税などの従来型の間接税は、商品の生産段階や消費地において課税できました。しかし(ボーダーレスな)インターネット上に構築されたデジタル・プラットフォームに対しては、それが困難になっています。デジタル税について検討する場合、新型の「営業税」を設計するという観点が必要なのでしょうか?

税の基本原則は、主として所得に課税することです。その場合の所得とは、収入から通常のコストを控除した純所得です。法人所得税や個人所得税、一部の国が導入しているキャピタルゲイン税は、いずれも純所得に対して課税しています。

しかし直接税である所得税は(控除などの仕組みが)比較的複雑で、課税回避の方法も少なからずあるのが実態です。(付加価値税などの)間接税が生産や販売の段階で課税するのはそのためです。現実には、間接税も最終的に消費者の個人所得のなかから支払われます。つまり(直接税との違いは)課税する段階がサプライチェーンの前段に移動しただけであり、税収の帰属先は消費者の居住地(である国や地方)になります。

国境を越えるビジネスに関しては、(国によって制度や税率が異なる)間接税の帰属の問題が生じます。しかし伝統的な国際貿易では、そのことが(国家間の)深刻な争議に至るケースはほとんどありませんでした。

なぜなら間接税の制度は、輸出国では商品の輸出段階の付加価値税を還付し、輸入国では商品の輸入段階で税関が付加価値税を徴収するルールだからです。そのおかげで、国際市場では各国の貿易業者が非課税べースで(公平に)競争できます。輸入品にかかる間接税は輸入国の消費者が支払い、税収はその国に帰属します。

しかしながら、この考え方に基づいてデジタル・プラットフォームに対応する新型の間接税を設計するのは容易ではありません。