昨年、都内に本社を構える中堅企業の社長は、プレゼンテーションソフトの資料を眺めながら周囲につぶやいた。

「横文字で難しいことばかり言われても、正直、何を言っているのやら。もちろん、わかったふりをしていたけどね。それにしても、こんなに高い費用がかかるもんかねぇ」

この企業は一昨年、コンサルティング会社に全社的なデジタル改革のコンサルを依頼した。コロナ禍に見舞われる前から市場の縮小傾向が顕著で、デジタル改革に乗り出さなければ生き残りは難しいと判断したからだ。

社長や社員に対するヒアリングはもちろんのこと、市場調査なども実施。3カ月かけて出てきた提案書は、グラフや図解が満載ですばらしく見えたが、アルファベットの略語であふれ、何とも理解しづらいものだったのだ。

コンサルタントには「すばらしい提案をありがとう」と謝辞こそ述べたものの、何度聞いても専門用語ばかりでよく理解できない。しかも新たなサービスを展開するためには、業務と組織の根本的な変更が必要だという。

となれば、これまで自らが築き上げてきたものを破壊しなければならない。よく理解できないものに、そこまでする必要はないのではないか。とはいえ、支払った報酬は3000万円と、決して小さな額ではなかった。そこで社長は、とりあえずプロジェクトチームをつくって人員だけは配置した。