明治・大正期の東京には凌雲閣という12階建ての展望塔があり、人々はそこからの眺望を楽しんだとのことだが、令和の東京では雲をしのぐどころか天にも届くような超高層ビルが建設中である。霞が関ビルディングがわが国初の超高層ビルとして建設されて以降、東京の30階建て以上のビルの数は1990〜2010年におよそ9倍になるなど、高層ビルの需要はつねに旺盛であるようだ。

高層ビルには人や企業を集めるという重要な機能がある。多くの人や企業が集まり、厚い労働市場やバラエティー豊かな財市場などが生まれる。これによる便益は経済学で「集積の経済」と呼ばれ、都市を発展させる重要な力である。

しかし、高層ビルの建設には、広い敷地の確保が必要だ。実際、東京都のデータを使って15階建て以上とそれ未満の建物を比べると、平均的な敷地面積の差は5倍以上。土地集約のため複数の地主との交渉が必要になるだろうが、難航すれば建設計画自体が止まるかもしれない。実際、森ビルが再開発を手がけた赤坂のアークヒルズは、計画から約20年後にオープンした。当時森ビルの常務であった森稔氏は著書『ヒルズ 挑戦する都市』で「上場していたら、こんなリスクの高い事業は株主が許さなかっただろう」と述べている。

こうした土地集約などの取引に関わるコストを、経済学では取引費用と呼ぶ。土地の集約や分割などの取引に際し大きな取引費用が発生するなら、その結果、土地区画のサイズが時間をかけても変わらず、経済活動に永続的な影響を与えるかもしれない。