認可保育所の利用調整に意図せざる「逆効果」 現在のルールでは結果的に高所得層が有利

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菅義偉政権の下で、全世代型社会保障検討会議が設置された。少子化対策はその柱の1つで、「待機児童の解消」も目標の1つに定められている。ここで期待されるのは、母親の就業促進だ。保育所の拡充は1990年代前半から続いているが、実際、どの程度の効果があるのだろうか。

本稿では、2000年から10年ごろまでの保育所拡充の効果を評価した、筆者らの研究グループによる実証分析の結果を紹介する。これまでの研究ではあまり顧みられなかったが、日本の保育政策が母親就業に及ぼした影響を考えるうえで重要な点は、保育の利用調整制度の「意図せざる帰結」だ。

待機児童がいる自治体では、限られた保育の枠を「利用調整」というプロセスを通じて配分する。保育の必要度が相対的に高いと判断された人に利用を許可する一方、低いと判断された人の利用を断るためだ。しかしその本来の意図に反して、このプロセスは、母親就業への効果が比較的小さい層をわざわざ選び出して利用枠を割り当てている可能性がある。

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