「米国で10年以上投資を続けているが、この1年は過去にないほどの盛り上がりを感じている」。こう語るのは、デジタルヘルス領域専門のベンチャーキャピタル(VC)、キッカーベンチャーズの清峰正志CEO。米シリコンバレーを拠点に投資活動を続けてきた清峰氏は、医療ベンチャー投資の活況を肌で感じている。

その勢いはもちろん、統計でも裏付けられている。医療ベンチャーの調達額はこの10年間で5倍に膨張。2020年には過去最高額の465億㌦に達した。全セクターの中でも医療関連は3割と、存在感を放っている。

実は、19年時点では医療ベンチャー投資の先行きは怪しいとみられていたという。それまでの数年間IPO(新規株式公開)が少なかったこともあり「過熱感が警戒され、投資意欲には一服感が出始めていた」(国内中堅VCのコーラル・キャピタルで医療領域を担当する吉澤美弥子氏)。

アナログな巨大医療市場

投資家が再び医療テックに注目する流れに火をつけたのは、皮肉にも新型コロナウイルスのパンデミックだった。オンライン医療を筆頭に、医療のデジタル化が一気に進み始めた。「医療領域は産業規模が巨大なのに、政府部門の次にデジタル化が進んでいないアナログ産業だった」(前出の清峰氏)。

医療領域でとくに技術革新の中心になっているのは、「オンライン医療」に「AI」「ゲノム分析」「再生医療」を加えた4領域だ。生体情報など膨大なデータを扱う医療においてAI活用の余地は大きい。デジタル領域だけではなく、創薬の領域でも技術革新は進む。