どんどんお節介になるAI 任せたほうがいい人生かも
評者/北海道大学大学院教授 橋本 努

『ランキング 私たちはなぜ順位が気になるのか?』ペーテル・エールディ 著/高見典和 訳(書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします)
[Profile] Péter Érdi ハンガリー生まれ。1970年エトヴェシュ・ロラーンド大学で化学の修士号取得。2002年に渡米。現在カラマズー大学複雑系研究センター教授、同大学物理学部教授、心理学部教授を兼任。国際神経回路学会元副会長。専門は計算論的神経科学、計算社会科学。

駅前のどの飲食店に入るかや旅行先で買うお土産などを私たちはランキングに頼って決めてしまうことがある。順位など当てにならないと思いつつも、「〇〇10選」などの情報を鵜呑みにしてしまうのはいったいなぜだろう。

単なる順位付けなら、ニワトリもエサや交尾の順番を決めている。序列を乱すと上位者に突っつかれるので、それを避けるために階層秩序を守るというのがニワトリたちの知恵だ。私たち人間も、上位者との関係を円滑にするために順位を気にしている。順位付けと階層秩序は、生物学的に説明ができそうだ。

しかし、現代人がランキングを気にするのには、別の理由が考えられる。情報過多で、選択に際して処理能力が追い付かないのだ。適切な情報を見つけ出すには時間と労力がかかる。そのコストを縮減して選択肢を示したものがランキングであり、あるいはグーグルなどの検索エンジンだ。

もっとも、ランキングは当てにならない場合も多い。優れた国の順位のように、私たちの主観的な評価に依存したランクにはあまり意味がない。優れた国について納得のいく順位を付けるためには、各人が自分の評価基準を自由に設定できるような仕組みが必要となるだろう。

それでもうまくいかないケースもある。科学者たちは、いくつかの評価基準によって論文を評価される。芸術家たちは、社会の評判原理によって、収入が左右されてしまう。いずれも客観的な評価を得ることが難しい。著者によれば、芸術家の場合、成功して高い評判を得るためには、第1に努力を惜しまず、第2に8割の時間をマーケティングに割いて、残りの2割の時間を本来の創作活動に用いるべきだという。驚いたことに、評価は売り込みに依存するのだ。

一方でAIの発展とともに、マッチング・アプリやネットのお薦め機能が発達してきた。私たちは自分で選択するよりも、AIに任せたほうが満足のいく人生を送れるかもしれない。実際、アプリを通じて結婚するケースも増えている。ネット動画大手のネットフリックスは、無数にある番組のなかから視聴者にお薦め番組を提案すべく、5つのアルゴリズムを用いているという。

AI技術が進化すれば、私たちは主体的に選択するよりも、慎重かつ楽観的に、さまざまなお薦め情報に従ってかまわないというのが著者の主張である。血縁、地縁や社縁に代わって、AI技術がお節介的な役割を引き受けるという現代社会の動向を本書は的確に捉えている。