20世紀の最重要人物の一人|J.M.Keynes
1883~1946年。非自発的失業の発生原因を論証し、政府の財政政策の必要性を強調。戦後の政策の軸となりケインズ革命と呼ばれた。主著は『雇用・利子および貨幣の一般理論』。(イラスト:安彦良和)

格差や不平等は大げさにいえば人類の歴史とともにありますが、とくに産業革命以降の資本主義ではつねに重大な問題です。これに対し、資本主義は根本的なシステミックエラーだと指摘したマルクスは、1848年にエンゲルスとともに『共産党宣言』を出版しました。システム全体を入れ替えろと主張したわけです。

実は同じ頃、英国ではむしろ格差を擁護する声が保守層を中心に強力な地盤を持っていました。「格差がなければみんなで消費してしまい、社会全体の貯蓄率は低くなる。そうすると社会全体を豊かにする産業資本への投資ができなくなる」というわけです。「格差は必要悪だ」というのが19世紀の保守イデオロギーだったのです。

ケインズは若いときから英ケンブリッジ大のサークル内では光り輝く存在として知られていましたが、世界の政治経済論壇に名をはせたきっかけは、第1次世界大戦のパリ講和会議後に出版した『平和の経済的帰結』です。彼は英国代表の一員として講和会議に参加しましたが、ドイツへの賠償金が重すぎて持続可能ではないと批判して代表の役職を辞任しました。

ケインズが30代半ばのときに出したこの本は世界でベストセラーとなり、ケインズのライバルだった経済学者シュンペーターもケインズの最高傑作だと評価しました。そこには後の主著『雇用・利子および貨幣の一般理論』へとつながる若き日のケインズのビジョンがはっきりと示されていたからです。

有効需要論の登場