いわい・かつひと 1969年東京大学経済学部卒業、72年米マサチューセッツ工科大学(MIT)で博士号取得。イェール大学助教授、東大教授などを歴任。著書に『貨幣論』『会社はこれからどうなるのか』『経済学の宇宙』など。(撮影:ヒダキトモコ)

資本主義の危機が叫ばれている。多角的な視点で資本主義の本質と限界を分析してきた経済学者は、自由放任主義ではない資本主義の創出こそこれからの人類の道だ、と説く。

資本主義に未来はあるか

2020年から続くコロナ禍で世界全体のGDP(国内総生産)は5%程度落ち込んだ。戦前の大恐慌に次ぐ規模ではあるが、資本主義の内在的な危機ではない。資本主義の本質的な不安定性をあらわにしたという点では、08年のリーマンショックこそ大きな転換点だった。

その根源には貨幣がある。

「貨幣は平等主義者だ」。これはマルクスの言葉だ。誰にとっても共通な価値としての貨幣を持つことで人間は身分や性別、出身地から初めて解放され、いつどこで誰と何を交換してもよい自由を得た。

一方で、その貨幣にはモノとしての価値はない。紙幣はただの紙切れだし、電子マネーに至っては電気信号にすぎない。それが貨幣として価値を持つのは、みんなが貨幣として受け入れるという自己循環論の支えがあるからだ。こうした「無から有」となった存在であるがゆえに、貨幣は本質的な不安定さを持つ。