慶応義塾大学経済学部教授 太田聰一(おおた・そういち)1964年京都市生まれ。京都大学経済学部卒業、ロンドン大学大学院修了(Ph.D)。名古屋大学大学院経済学研究科教授を経て2005年から現職。専門は労働経済学。著書に『若年者就業の経済学』、共著に『もの造りの技能─自動車産業の職場で』『労働経済学入門』など。(撮影:梅谷秀司)

インターネット上のプラットフォームを通じて単発の仕事を請け負う働き方(ギグワーク)は、ウーバーイーツなどによって日本でもすっかりおなじみになった。正確な統計はないものの、日本におけるギグワーカーの数は700万人に達するともいわれる。昨年7月に閣議決定された成長戦略実行計画では、ギグワーカーも含めたフリーランスの人々が安心して働くことができるためのルールの整備が打ち出され、年末にはガイドライン案も提示された。

よく知られているように、ギグワークをめぐる議論の焦点は、その働き方が雇用ではなく、個人事業と見なされていることだ。一般の労働者を保護するための最低賃金や労働時間規制、労災保険による補償などは適用されない。にもかかわらず、その個人事業が実態としては雇用に極めて類似する形で行われていることが少なくない。

最近の事例では、今年2月に英国の最高裁判所が配車サービスビジネス大手の米ウーバー・テクノロジーズ(以下、ウーバー社)に対して、「ウーバー運転手は、ウーバー社が主張するような個人事業主ではなく、従業員に相当する」という判決を下している。この判決を受け、ウーバー社は今後、英国のすべてのウーバー運転手に対して最低賃金の順守や休日手当の支給などを行うという。